ヤングケアラーのことをみんなで学ぶ研修会を開催しました(松本市2025.12.4)

12月4日(木)に松本市浅間温泉文化センターを会場にオンラインとのハイブリットで研修会を開催しました。「ヤングケアラーのことをみんなで学ぶ研修会【子どもの権利編】」を開催したところ、当事者やご親族、教育・福祉・行政関係者、子ども支援に取り組む様々な団体等、約130名の方が会場・オンラインに集まって学びました。

基調講演として、「ヤングケアラーの理解にむけて~子どもの権利を守る観点から~」をテーマに『大阪公立大学教育福祉学類長の伊藤嘉余子さん』に子どもとしての権利が守られていないヤングケアラーの実例をご紹介いただきました。講演の中で、「ヤングケアラーという言葉ができたことで、予算がついて支援の幅が広がり、助かる人がいるのは事実だが、子どもがケアの責任を持つ必要がある状況をなくしていくために、ケアが必要な人にケアがあまねく届けられる社会づくりが重要。その社会に向けて、今困っている子を助けるための取り組みとして、仕組みを考えなければいけない」ということを話されました。

 また、日本では①早期発見、②相談支援、③家事育児支援、④介護サービス提供、に取り組むなかで、ヤングケアラー支援を先駆的に取り組むイギリスでは⑤余暇・レクリエーションに取り組んでいることを挙げ、行政だけでは担いきれない子どもらしく過ごす権利の保障のため、NPO等の民間団体との連携も重要と話されました。

 シンポジウムでは、行政機関、民間福祉事業所、専門的知識を持つ地域の人、のお立場でそれぞれにご登壇いただき、思いをお聞きしました。

 飯綱町教育委員会の風間さんは、ヤングケアラー実態調査を町内小学校5・6年生と中学1~3年生に実施するにあたり、ヤングケアラーの理解を図るために、出前講座とセットで実施された実践をご報告されました。こうした取組の結果、ヤングケアラーの理解だけではなく、自ら声を上げること(相談すること)の重要性や共に助け合うことの大切さの情勢につながり、人権を考える芽を伸ばしていくことにつながったことをお話されました。

 箕輪町社会福祉協議会の緑川さんは、地域福祉コーディネータ―を町内に7名配置し、複合的な世帯課題を総合的に受け付けるエリアを対象にした相談と、子どもの居場所やアウトリーチ支援を行うテーマ型の相談とを、統合して受け止め、多機関と連携して解決に向けて取り組んでいる実践をご報告いただきました。学校でも家庭でもない第三の居場所が必要と言われていますが、箕輪町では10の子どもの居場所が立ち上がり、自分にあった居場所を選ぶことができ、依存先がたくさんあることが豊かな地域につながっていることを話されました。

 長野県社会福祉士会の曲渕さんは、相談事例をもとに子どもが声が声を上げられない環境に地域の身近な大人の相談者として、こどもの意見をアドボケイトするなかでの取り組みをご報告されました。子どもにとって守られる権利が、様々な支援者が継続して関わっていたケースにも関わらず、大人の管理のなかで様々な権利が阻害され、現在もその困り感が続く中で、縦割り支援と信頼関係が排除されている構造的な課題に気が付き、本人との対話を通して大人にとっても子どもにとってもちょうどよいルール作りに向けてご提言をいただきました。

研修全体を通して、ヤングケアラーという言葉に括られる中でも、子どもそれぞれに困ることは異なり、支援をしている自分を認めてほしい、分かってほしい、話を聞いてもらうだけでも心が軽くなる、というその子らしさを支援していくことが大切であることを学びました。誰かの幸せが私の幸せにつながるという働き替えを通して、地域全体が良くなっていくために、それぞれの立場で取り組みをすすめていくことを確認しました。

 

研修の参加者からは、「子どもの権利を尊重すること。特に対話で落とし所を゙探っていくことが支援にあたり大切だと思った」、「子どもにも大人にも優しい地域であること、自分のために自分の時間を使う」といった感想をいただきました。今後もこうした学びの場を継続して創っていきたいと思います。